氷菓 第16話『最後の標的』感想

氷菓 第16話 「最後の標的」01

「おーっす」
「相変わらず省エネに勤しんでるわね」

「姉貴?本当に来るとわ・・・」

文集が順調に売れていた矢先、古典部の部室で一人静かに店番をしていた折木の前に供恵が様子を見に現われ文集を買ってくれる。

文集を買ってくれた事には素直に感謝する折木だったが、トラブル事ばかり運ぶ姉の登場に内心では早く帰ってくれる事を祈るばかりであった。

氷菓 第16話 「最後の標的」02

「これ貰うわね。代わりに・・・はい」
「何だよ・・、夕べには骸に?」
「・・・漫画か」

「これが暇つぶしになるかどうかはアンタ次第ね」
「どういう意味だ?」

部室に来るまでに見つけた壁新聞の記事から現在校内で起きている事を把握していた折木供恵がタダ何もせずに帰るはずもなく、折木に1冊の同人誌をわざとらしく授け意味深な言葉を残して去ってゆく。

その手渡された同人誌こそが「夕べには骸に」であり、今回の事件の鍵を握っているものであった。

氷菓 第16話 「最後の標的」03

「予告します」
「次回作のタイトルは『クドリャフカの順番』」


手渡された本を読む折木はその「あとがきに」書かれていた単語に興味を引かれる。

「夕べには骸に」を合作した三人は、来年も同様に同人誌を製作すると書いていたのだが、その題名が『クドリャフカの順番』となっていたのだ。

クリスティーの有名作品をモチーフにした作品という事だが、この作品の事がどうにも現在校内で起きている「十文字事件」に似ているような気がしてならないのだった。

氷菓 第16話 「最後の標的」04

「願ってもないチャンスです」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

「じゃ、十二時に放送室ね。放送は十二時半だから、よろしくぅ」
「はいっ、・・・はぁ」

一方、えるは当初の目的である宣伝のため放送部を尋ねていた。
トントン拍子に昼の校内放送への出演が決定し、喜ぶえるだったがその表情はどこか疲労の色が見て取れた。

氷菓 第16話 「最後の標的」05

「千反田、今はそれ所じゃないだろう」
「わ、わたし・・・私、気になります」

放送部から戻ってきたえるは、折木が熱中する同人誌の絵をどこかで見かけた覚えがある事に気づく。
だが、それがなかなか思い出せず同人誌をもっと見たいとねだるが折木が渋るため、何とか見ようと折木に密着しようとする。

そのえるの見事な谷間にほだされた折木はついに折れ、えるに「夕べには骸に」を貸すのだった。

氷菓 第16話 「最後の標的」06

「ごめん、伊原」
「私、そんなつもりじゃ・・・」


摩耶花は相変わらず漫研で一部の女生徒らから虐げられる扱いを受ける。
そんな中、とある女生徒の行為が偶然にも水の入ったバケツをこぼしてしまう事件が起き、摩耶花の衣装が汚れてしまう。

数々の辛辣な言動に限界まで耐えていた摩耶花は泣き崩れる事はこらえたが、部室に残ることは出来ずに着替えを理由に部を抜け出すのだった。

氷菓 第16話 「最後の標的」07

「ちょっとすいません、そこに貼ってあるポスター誰が書いたのか分かりますか?」
「ああ、それなら陸山だよ」
「えっ、陸山 宗芳さんですか?生徒会長の?」

部を抜け出した摩耶花は途中でえると出会い、「夕べには骸に」の作画を担当したと思われる人物の描いたポスターを一緒に見に行くことになる。

その結果、「夕べには骸に」の作画を担当していた人物が生徒会長の陸山である事が判明する。

摩耶花は自分が好きな作品の作画が生徒会長であったことを折木たちにも伝えるのだが、折木はその生徒会長の名前にすらピンと来ない。

どれだけ他人に関心がないんだ、と古典部のメンバーもかなり面食らうのであった。

氷菓 第16話 「最後の標的」08

氷菓 第16話 「最後の標的」09

「安心院ってなんだよ、それは『あじむ』って読むんだよ」

そして、三人の作者のペンネーム「アジム タクハ」の名前についてクローズアップがされる。

一見するとこのペンネームはどこかの地名のように思われるが、原作者の『安城 春菜』や作画の『陸山 宗芳』の名前を聞いた後ではこのイントネーションはどこか引っかかる

というか、京都アニメーションは親切すぎるので、無意味なクローズアップはないだろうから意味があるはずだ。

おそらく、このペンネームは作者たちの名前をもじった物で、「ア・ハ」と「ク・ム」。
そして、残る一人「ジ・タ」の人物が居るのだと推測できる

氷菓 第16話 「最後の標的」10

「千反田が邪魔だな。俺がやろうとしている事を知ったら反対するに違いない」
「里志・・・すまんがちょっと来てくれ」

「やっぱり、何か分かったね奉太郎」
「ヴえ」

「夕べには骸に」を読み、今回の校内での事件がおそらくこの本に描かれている『クドリャフカの順番』になぞらえた事件なのだと思い始めた折木は考えをまとめようとするがえるが反対する事を恐れ、部室外で里志と二人だけで話をしようとするがうまくいかない。

えるに反対されるというような事?
摩耶花の『コスプレ衣装』をエサにして十文字を色仕掛けでおびき出そうとでも考えていたのだろうか?

氷菓 第16話 「最後の標的」11

「私だって、とっても気になっているのに。どうして福部さんだけ・・・」

氷菓 第16話 「最後の標的」12

「まいったな、かくなるうえは・・・」
「確かに十文字事件の事だ」

「じゃあ、私達も是非・・・」
「ものすごく卑猥な話だが、いいか?」

氷菓 第16話 「最後の標的」13

「・・・・」

ものすごく卑猥な話なので、えるは聞くに耐えられないだろう。
なんだ、むしろ聞きたいのかエロい奴め。>えっ、そこまで言ってない・・・

えるの居ない所で話をしたいと考える折木の追い詰められた苦し紛れの一言はえるの好奇心を完全に破壊し、活動を止めてしまうほどの威力を秘めていた。

聞きたいという欲求と、聞いてはいけないという羞恥心に苛まれ、精神活動が停止しレイプ目状態に陥るえる。
ありがとう、単純に羞恥の表情もいいがやはりレイプ目は素晴らしい。
心の底からサンキューフォーレイプ目

卑猥な話と聞いて積極的に自分から聞きたいなどと言う事が出来ない純粋無垢なえるは折木の目論見どおり話を聞くことを辞退。

氷菓 第16話 「最後の標的」14

「どうやってさ!?」

「夕べには骸に」が事件と何らかの関連性があるかもしれない。
だが、それが十文字とどう繋がるかもいまだに見当がつかない折木。

十文字を捕まえることにあせりを感じる里志は、そんな悠長な折木につらく当たってしまうがすぐに冷静さを取り戻し話を聞くのだった。

そこで、折木はこれまでの事件から浮かぶ謎をいくつかあげてゆく。

・何故部活から物を盗むのか?
・グリーティングカードを残す意味は?
・何故失われたなのか?
・「カンヤ祭りの歩き方」を残すのか?
・何故「く」を飛ばしたのか?

多くの小さな謎があるのだが、大きな部分で言えば犯人の残すしおりについては、これまでの事件からおそらくそのページに載っている部活で起きているからだろう。
他の部活が載っている物では範囲が絞れない。
さらに、気になるのは今回の陸山の名前を指し示したとおり、同じページに「陸山」の名前がある事。

おそらく、「く」を飛ばしたのではなく「陸山」か「クドリャフカ」に関連する何らかの事件が起きているのだろう
そうであれば、すべてつじつまが合う。

氷菓 第16話 「最後の標的」15

「そして、予告された今年。明らかにABC殺人事件から頂いたような事件が起きている。こいつは偶然か?」
「つまり、奉太郎は十文字事件は『夕べには骸に』で予告されていた、と言いたいんだね」
「まぁ、まったく関係がないとは思えないくらいだな」

そして、今回の事件が本当に「クドリャフカの順番」になぞらえた事件であるなら、犯人は自然と「クドリャフカの順番」を知っている人物となる。
だが、転校した「安城 春菜」には不可能であり、「陸山」もそんな事をするはずがない。

なぜなら、事件は起きているのですでに脚本が完成している筈で、本来ならばその本が今年の文化祭に出ている筈だからである。

だが、「クドリャフカの順番」というような本は売られていない。

原作はあり、時間的余裕もあっただろうに陸山は描かなかったのだ
つまり、陸山はクドリャフカの順番を製作しようという意欲や、熱意を持っていない事になる
「クドリャフカの順番」に対して何の熱意も持たない陸山が今回の事件を起こすはずがない

とすれば、おそらく生徒会長に何かポスターを描くように薦めた人物が怪しくなる。
そう、「ジ・タ」が名前につく人物『田名辺 治朗』である。

氷菓 第16話 「最後の標的」16

「里志、この事件何か意味があるぞ」
「・・・、僕は戻るよ千反田さんも心配だしね」

この事件は完成された「クドリャフカの順番」を、漫画として出せなかった事に対する田名辺の何らかの『叫び』なのだろうか?

そこには一体どのような意図があり、思いがあるのか?

氷菓 第16話 「最後の標的」17

「期待しているよ、奉太郎」

ダークサイド全開

十文字を捕まえることばかりあせる里志は折木の閃きばかりを頼りにし、半ば自分で考える事を放棄したかのような言葉をつぶやくのだった。

氷菓 第16話 「最後の標的」18

「本日、最終日のゲストは古典部部長の千反田えるさんで~す」
「は、はい。よろしくお願いしま・・・ふぎゃっ」

12時30分。
昼の放送が始まり、残すところあと僅か。

「校了原稿」をエサにバラバラな思いを胸に十文字を待ち受ける折木たち。
そして、えるはちゃんと古典部の宣伝が出来るのか?次回に続く。

今回は折木姉の登場でいきなり事件が急展開。
犯人の手がかりが一気に分かってしまった。

そして、さらに黒く辛い青春の一面を見せる里志や摩耶花たち。
里志にいたってはもう、ダークサイド過ぎてこのまま放って置くとえらい事になりそうだ。

このまま何の結果も出せず、自分達の居場所も見出せぬまま逃げ続けてしまうのか?
次回は犯人の動機や里志たちがどう自分の置かれた立場から逃げずに立ち向かうのかに注目したい。

氷菓 (角川文庫)氷菓 (角川文庫)
(2001/10/31)
米澤 穂信

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